2015年8月17日月曜日
Diary. 115 見るもの見えないもの
そこそこ長く生きてきたのに、まさかこんな状態に陥ってしまい、正直毎日戸惑っている。
というより、混乱している。混乱と、朦朧と、高揚と、消沈と、目まぐるしく交錯している。
おかげで恩師にも多大な迷惑を掛け、もう踏んだり蹴ったりだ。自分も被害者だという
開き直りたい内心と、きっと、それでも必ず僕が悪いのだと自責する思いが相剋し、
冷静になることは難しい。今は、書に道を探している。
写真は、もはや最近は全く撮りに行っていない。過去の撮影を振り返り、スキャンしたり、
見直したりするのも稀で、わずかである。活字、活字、今は抽象的表現の糸口ですら、活字の
中に求めている。
突然、激しい雨が降り出した。カメラを取り出し、ベランダから数枚撮る。それで、
気が落ち着いてしまう。そんな程度。ソファ、ベランダ、風呂場、トイレ、たまに徒歩5分圏内、
そんな程度。
どうやら自我が迷子になっている。自我と自我が、出口の見えない議論をしている。
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2015年8月15日土曜日
Diary. 114 撃ち抜かれて
その時僕は草原に立っていて、時刻は昼間、天気は悪く、とても曇っていて、
激しい風が体を揺らすほどだった。
足を肩幅ほどの広さに開き、しっかりと立って、両手をぐっと前へ伸ばして本を
しっかりと開いて持っていた。その恐怖と緊張感で、僕の全身にはかなりの力が入り、
硬直していた。
僕の構えた書物の前方に、古い日本の警官のような、軍服の様なものを着た男が立ち、こちらへ
銃を構えている。今にも僕を撃とうとしているのが分かる。僕は恐ろしさよりも、
何かを守りきりたい気持ちが強くなり、やがて撃たれることがちっとも
恐くなくなった。その瞬間、すでに空中へと放たれた銃弾は僕の握りしめた書の
ほぼ中心を貫通し、続けて僕の体の中心も突き抜けて、僕は勢いよく後ろへ吹き飛んだ。
その時に感じたのは、寂しさでも、苦痛でも、後悔でもなくて、本当に驚くほどおだやかな、
満足感だった。これで良かったんだ。風は弱まっていて、心地よく吹き抜けた。
いつものベッドの左脇で目が覚めると、全身と後頭部が汗でひどく湿っていた。
最近よく夢を見るが、ほとんど覚えていない。ほとんど、こういった類、それが、
床についてから朝まで、きっとずっと続いている。そういう日が続く。
今何時か分からない闇夜の中で、ああ、銃はカメラだなと思った。書物は・・、
書物はなんだろうか。知識か、抵抗か、あるいは過去、ではなくて、未来か。
信頼を寄せていた人を失望させ、家族の様に思えと言ってくれた人に他人と言わせ、
つまり当たり前の事を当たり前の様に言われて、僕は当たり前の様に今日も生きている。
それも夢。とにかく、一日が長い。夏はてっぺんを過ぎたけど、今年は長くなりそうだ。
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2015年8月9日日曜日
Diary. 113 隙間から手を伸ばして
最近よく感じるのは、心も体も頭も、ただの容れ物のようなものに過ぎなくて、
自分という存在は全く固まった実態はなく、ただその容れ物の周りを、靄みたいに、
ぼんやりと漂っているような感覚であるということ。突然、強い風が吹き付けてきたなら、
簡単に吹き飛んで消えてしまうような、そんな危うい、とても存在とは呼べないほどの
頼りないものが、ああ、自分なんだなと思う。
ふと右手を見つめてみても、その手で体を撫でてさすってみても、それが自分であるだなんて
僕は全く実感が持てない。誰かがそう呼ぶことはあっても、僕が実はどこにあるのか、
僕には分からない。写真を撮って残すと、確かに僕がボタンを押したという記録だけが残る。
自分の存在を確かめようとして、写真を撮っているのかも知れない。そんなもの、考えてみれば、
別に欲しくなんてないのに。僕は欲しくもない確証のために、写真を撮っているのかも知れない。
要らないものですら欲しがるほどに、僕は本能的に、何かに飢えているのかも知れない。
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2015年8月5日水曜日
Diary. 112 塗り変わる過去の記憶
再び迷い込んでしまった僕は、かなり悩み続けた挙句、そのどうも輝いて見える
過去というやつの現状を、確かめてみようと思った。過去は明るく輝いて感じられ、
また未来はすぐ目の先でさえも闇に包まれているように感じたから。事実が知りたかった。
結果、僕の知っている過去はもはや跡形もなく、さらに古びたものに塗り替えられていた。
そこに輝きや光など、もうなかったのだ。まるで夢のように、ふっと消えて、夢だったかのように、
そこにはなんの面白みもない景色がただ呆然と広がっていた。過去はそこに無言で横たわっていた。
過去も未来も、もう分からなくなった。代わりに、今が今として、間違いではないことが
分かった。それは僕にとっては、ちょっとした発見になった。
結局、今を撮り続けるしかない。今を見つめ続けるしかない。それが過去になり、
いつか未来になるのだろう、きっと。
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