2015年12月29日火曜日

Diary. 116 空白と闇の海




随分と長く、正確には8ヶ月か、闇の海を溺れそうになりながら、
泳いだり、船を漕いでみたり、島に漂着したり、そんな毎日が
まるで永遠という途方もなく長く感じる言葉に締め付けられるかのように、
僕は人生で初めて味わう人生の苦渋を飲み込んだ。

正確には、今も口の中いっぱいに苦味がこびり付いて剥がれない。
表面的に明るくても、楽しく笑顔が生まれても、まだ闇は僕を逃すつもりは
無いらしい。混乱といえば言い訳にしか聞こえない。
八方塞がりの穴倉の中から、臆病に片手を手首あたりまで出してみては
すぐに引っ込める、そんなビクビクと怯えた自分を隠して繕いながら、
また仕事に復帰する格闘を始めた。自分の意思。もちろんそう。ただ、
他人に少なからず操作されない意思なんて存在しない。僕は、
いつだって、僕の人生を生かされている。多分、本当に大切な人でも、
むやみやたらに傷付けながらわがままを通している。

悪いと思う気持ちはある。ただ、その時には気付けない愚か者でもある。
僕は闇を足にまとわりつけて引きずったまま、闇の狭間を求めて
街を歩き、カメラで暴こうとしている。足は揺れている。地面は
大きくなだらかにかつ凶暴に歪んでいる。僕は履き潰したブーツで
街の闇を歩く。

家を探している。いつか赤い繭になれればいいのに。
その時僕は初めて、街に還るのだ。