その街に、僕はまた吸い込まれて落ちていく。
なんの障害もなく眠りに落ちる時のスムーズさに似た、
心地よいほどの落下速度で、街へ落ちていく。
片手には新しいカメラ。デジタル。正直使いにくい。
フィルムとは違う。でも、これで撮らねばならぬ理由がある。
撮らねばならぬ。悪い癖。でも、それを欲しているのもまた、
奥底の自分でもある。
友人との待ち合わせまでの、ほんの一時間。
雨上がりに鈍く反射する地面。傘を開いたり閉じたりする人たちの、
まばらな影。
僕という存在なんてみんな気にもかけない。いてもいなくても同じ。
それが写真には都合が良く、僕は半分調子に乗ってカメラを構え、
また街を歩く。
上を見上げたり、下を俯いたり、人生に似た、波に揺られ、
街を撮り歩く。
僕は会いたい。誰かに会いたい。街に会いたい。自分に会いたい。
やはり何かを探し求めているのだ、あの時と、根本は変わってはいなかった。
帰ってきて、データを眺めて、そう思う。あの時とは、色々変わったけれど、
結局何も変わってはいない。
変わりたいのか、変わりたくないのか。
その答えは、やはり写真が持っているのかも知れない。
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